負動産を相続するデメリットは?処分する方法についても解説
相続が発生した際、親が所有していた財産は、相続人となる子どもが引き継ぐのが一般的な流れですが、財産のなかには、相続するとデメリットが生じるものもあります。
とくに「負動産」と呼ばれる土地や建物は、所有していてもメリットがないため、早急に処分を検討するのが得策です。
そこで今回は、負動産とはどのようなものなのか、相続するデメリットや処分方法、所有を回避する相続放棄について解説します。
不動産の相続を控えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
相続発生時に気を付けたい「負動産」とは
土地や建物といった不動産と聞くと、資産のようなイメージがありますが、実は出費がかさむ負動産となる場合があります。
そこでまずは、負動産とはなにか、相続するデメリットについて解説します。
負動産とは
負動産とは、利用する予定がなく、利益を生むどころか出費ばかりかさむような不動産のことです。
負動産というのは造語で、「負(マイナス)」の不動産という意味が込められています。
具体的には、以下のような不動産を指します。
●利用する予定がない実家
●空室が多い賃貸物件
●放置している別荘
とくに負動産になりやすいのは、親から相続した実家や農地です。
売り出せば買主が見つかる、賃貸物件にすれば入居者が見つかるといった物件であれば相続する価値がありますが、そうでない場合は相続してもメリットはほぼありません。
不動産を相続するデメリット
負動産を相続すると、以下のようなデメリットが生じます。
●固定資産税がかかる
●空き家のリスクが生じる
どういうことなのか、デメリットの内容について見ていきましょう。
固定資産税がかかる
不動産を所有している方には、毎年固定資産税が課されます。
将来利用するつもりがあれば、住んでいないあいだに支払う固定資産税も仕方ないと思えるかもしれません。
しかし、いらない不動産に毎年固定資産税を支払い続けるのは、無駄な出費です。
また、建物が建っている土地であれば、住宅用地の特例により、税金の軽減措置が受けられます。
建物が建っていない土地には住宅用地の特例が適用されず、高額な固定資産税がかかっているため、とくに注意が必要です。
空き家のリスクが生じる
親が住んでいた実家が空き家になり、そのまま放置しているというケースも多く見られます。
しかし、空き家はさまざまなリスクを抱えており、放置するのは危険です。
たとえば、放火による火災や地震による倒壊が発生した場合、空き家が原因で隣家の住民や通行人に被害が及ぶと、賠償責任を問われる恐れがあります。
また、空き家の所有者には管理義務があります。
定期的に訪れ、清掃や換気などをおこなう必要があり、その手間と費用がかかるのです。
管理を怠り、放置するのは危険であると自治体が判断した場合は、特定空家に指定され、強制的に解体される場合があります。
その場合の解体費用は、所有者が負担しなければなりません。
このように、利用価値のない「負動産」は、管理する手間がかかるだけでなく、出費もかさむため、早急に処分することをおすすめします。
相続した負動産を処分する方法
次に、負動産を処分する方法について解説します。
負動産は、以下のような方法で処分することができます。
●売却する
●空き家バンクに登録する
●寄附する
上記の3つの方法について、順番に解説します。
方法1:売却する
相続する予定の土地や建物が負動産になる可能性がある場合は、早めに売却を検討することをおすすめします。
不動産の売却方法には、仲介と買取の2種類の方法があります。
仲介は、不動産会社と媒介契約を結び、売却活動をおこなって買主を探す方法です。
購入検討者のなかから好条件で購入してくれる買主を選んで取引できるため、市場相場に近い価格で売却できる可能性があります。
しかし、仲介で売却する場合は、状態の良い物件や、需要が高い立地にある物件に向いています。
買取は、不動産会社が直接買主となって不動産を買い取る方法です。
売却活動をおこなう必要がないため、査定価格に納得すれば、すぐに売買契約に進み、早く現金化できます。
また、買取は、売却しにくい不動産でも処分できる可能性があります。
負動産の場合は、築年数が古い物件や、立地条件が悪いケースが多いため、買取のほうが向いているかもしれません。
方法2:空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、各自治体が空き家の活用と移住者の促進を目的におこなっている取り組みの1つです。
空き家を処分したい方と、物件を探している方をマッチングするサービスで、登録は無料です。
ただし、自治体は空き家を紹介するだけで、取引は個人同士でおこなわなければなりません。
条件の交渉や売買契約、所有権移転登記など、不動産取引は専門的な知識を要する場面が多いため、個人でやりとりするとトラブルになることも少なくありません。
方法3:寄附する
負動産を寄附するのも方法の1つです。
寄附の相手は、自治体だけでなく、個人や企業などさまざまです。
しかし、いずれも、受け取る側に利用価値がある不動産でなければ、受け取ってもらえません。
隣地の所有者などに、個人的に話を持ち掛けてみるのも良いですが、受け取る側には贈与税が課されるため、隣地の所有者によほどメリットがなければ、寄附は難しいでしょう。
このように、3つの処分方法について解説しましたが、空き家バンクはトラブルになる恐れがあり、寄附は受け取ってもらえたとしてもお金を得ることはありません。
したがって、負動産を処分したい場合は、少しでも価値があるうちに売却するのがおすすめです。
負動産を相続放棄する方法
負動産となることがわかっていて、相続を回避したいというケースもあるでしょう。
その場合は、相続放棄という選択肢もあります。
そこで最後に、負動産の相続放棄について解説します。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続財産となる資産や負債に対する権利や義務の一切を引き継がず放棄することです。
相続放棄をすると、もともと相続人にはならなかったものとみなされます。
相続放棄をするためには、相続開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所へ申立てをおこなう必要があります。
相続放棄の注意点
相続放棄をするときには、以下のようなことに注意が必要です。
●プラスの財産も相続できない
●相続放棄は撤回できない
●ほかの相続人に影響する
先述のとおり、相続放棄は、相続財産のすべてを放棄することです。
たとえば、負動産は相続したくないが、現金や預貯金はほしいといったように、放棄する財産を選ぶことができません。
また、あとで多額の財産が見つかったとしても、相続放棄を撤回してそれを取得することもできないため、プラスの財産とマイナスの財産をすべて洗い出したうえで検討する必要があります。
さらに、相続放棄は単独でできますが、ほかの相続人に影響します。
たとえば、相続人が2人いて、1人が相続放棄をすると、もう1人の相続人が負動産も含めすべての財産を相続することになるのです。
そういった、ほかの相続人への影響も考慮したうえで検討することが大切です。
まとめ
負動産とは、利用価値がなく、所有していても出費ばかりかさむような土地や建物のことです。
負動産の所有を回避するために相続放棄を選択する場合は、プラスの財産も相続できなくなるため注意が必要です。
負動産を処分するには、空き家バンクへの登録や寄附といった方法がありますが、売却すれば現金を得ることができるため、売却しにくい場合は買取も視野に入れて現金化することを検討しましょう。